心のケアで音楽業界を支える、新サービス「Sotto」の挑戦

新サービス「Sotto」のサービス開始を記念して、音楽業界でアーティストコーディネーションを行う株式会社フィアレス 代表取締役の島と、オンラインカウンセリング・コーチングを提供する株式会社cotree 代表取締役の西岡に、「Sotto」を始めた理由や業界・社会の現状について聞くインタビューを行いました。

音楽業界のメンタルヘルスケアを革新する、新サービス「Sotto」とは?

 

――新サービス「Sotto」の内容を簡単に教えてください。

西岡:

新サービス「Sotto」は、音楽業界向けに特化したメンタルヘルスケアのサービスです。

今までcotreeは、オンラインカウンセリングを中心としたメンタルヘルスケアのサービス提供してきましたが、今回、音楽業界に精通しているfearless社とタッグを組んで、音楽業界向けに特化したメンタルヘルスケアサービスを提供開始します。

サービスの第1弾として、オンラインカウンセリングの提供からスタートします。

オンラインカウンセリングには、ビデオ通話や音声を活用する「話すカウンセリング」と、テキストでカウンセラーとやり取りをする「書くカウンセリング」の2種類を用意しています。

どちらも24時間365日ご利用いただけますので、お仕事などで夜遅くまで忙しい方や土日しかご利用いただけない方も隙間時間にカウンセリングを受けていただけます。

また日本語以外にも英語や中国語などの外国語にも対応していますので、グローバル人材のサポートも可能です。

「Sotto」の第1弾はオンラインカウンセリングからスタートしますが、今後コンテンツを拡充して、より多くの方々に使っていただきやすいサービスを目指していく予定です。


――「Sotto」が生まれたきっかけを教えてください。

島:

音楽業界で20年以上働いてきた私は、アーティストもスタッフも絶えず激しい競争の中にいることを感じています。この競争はまるで椅子取りゲームのようで、常に自分のポジションを守るためにプレッシャーと闘っているのです。

しかしこの競争は、クリエイティビティを刺激し、素晴らしい音楽作品を生み出す大きな原動力にもなっています。それゆえ、このプロセスで心の健康を守ることが非常に重要で、メンタルヘルスケアがクリエイティブな仕事の質を支えるために不可欠だと深く感じています。

そのような問題意識を深く感じていたとき、cotreeとの出会いがありました。私たちは、音楽業界におけるクリエイティビティの可能性を全て引き出すためには、メンタルヘルスのサポートが不可欠だと確信しました。この思いから、メンタルヘルスを根本から改善しようというビジョンのもと、「Sotto」プロジェクトを立ち上げることになりました


――「Sotto」の強みをズバリ教えてください。

西岡:

まず大きな強みは、音楽業界のスペシャリストであるfearless社と、メンタルヘルスケアのスペシャリストであるcotreeとでタッグを組んでサービスを提供するという点ですね。

また、プライバシー保護もしっかり対策しています

音楽業界で働く方々は、アーティストや作品に関する機密情報を抱えていらっしゃるため、カウンセリングで相談したくても情報漏洩が心配かと思います。

その点cotreeは、臨床心理士や公認心理師の資格を持つカウンセラーが多く登録していますので、守秘義務をしっかり守った質の高いカウンセリングをお届けできます。

また運営側の体制としても、第三者機関が認めるプライバシーマークを取得し、皆様の大切な個人情報を保護しています。ぜひ安心してカウンセリングを受けていただきたいと思っています。


――では、「Sotto」をどのような方に使っていただきたいでしょうか?

島:

「Sotto」は、音楽業界であらゆる役割を持つ方々にとっての頼れるサポートとなることを願っています。これには、フロントラインで輝くアーティストだけでなく、曲作りを支える作曲家や作詞家、感動を届けるために裏方で尽力するプロデューサー、マネージャー、音響・照明技術者、そしてライブイベントを可能にする舞台スタッフやセキュリティ担当者まで含まれます。さらに、マーケティング、PR、レーベル運営などの業務に携わる方々にも、私たちのサービスを利用していただきたいと考えています。

企業が取り組みたい健康課題No.1は、メンタルヘルス


――働く人のメンタルヘルスケアについて、日本企業の現状を教えてください。

西岡:

業種や会社規模にかかわらず、メンタルヘルスケアの問題はとても深刻化しています。

実際に精神疾患で休職される方も増えている傾向がありますので、企業としてもなんとかして取り組みたい課題になっていると思います。

経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人」にエントリーする企業が年々増えていますが、その中で取り組みたい重要なテーマとして、メンタルヘルス不調の予防がありますです。

また、厚生労働省のメンタルヘルスケア方針の中で掲げられているのですが、社内でヘルスケアの仕組みを整えることはもちろん、外部窓口を設けることもメンタルヘルスケア対策

にとって重要です。

メンタルヘルスケアに関しては、問題の根幹が職場環境や上司との人間関係にあったりと、社内だけでは解決しづらい場合があります。そのため、cotreeのような外部窓口にご相談いただく環境を整えることが本質的な改善に繋がる近道になりえます。

その中でもやはり業界特有の働き方があるかと思うので、今回のように業界に特化していて専門的な知見を持たれてる方々とパートナーシップを組んでいくことで、メンタルヘルスケアの問題の解決を目指したいと思っています


――
働く人の心の状態が悪化する前に、予防することも大事ですよね。

西岡:

そうですね。体の不調にも出てしまってる時には状態が深刻になってしまってる場合があると思うので、いかに早く専門家に頼れるかが重要なポイントだなと思っています。

「何かちょっとざわざわするな、いつもと違うな」と感じたときに、気軽にご相談いただくことが重要です。

SNS普及により大きく変化。音楽業界のメンタルヘルス課題



――では、音楽業界にはどのようなメンタルヘルスケアの課題があるのでしょうか?

島:

日本の音楽業界において、メンタルヘルスケアはまだ多くの人にとって未知の領域であり、カウンセリングを受けることに対して抵抗を感じる方が少なくありません。

そこで私たちは「Sotto」を通じて、メンタルヘルスケアとカウンセリングが音楽業界でのクリエイティブな仕事をサポートする重要な手段であることを広めていきたいと考えています。カウンセリングがどのようなサービスなのか、いつでも頼りにして良いものなのだという理解を深めることが、この認知のギャップを埋める鍵です。

西岡さんが指摘されたように、日々の小さなストレスを溜め込む前に、適切に対処していくことが大切です。そのために私たちは、「カウンセリングを利用することは決して恥ずかしいことではなく、むしろ自己ケアの一環として積極的に行うべき」というメッセージを伝えていきたいです。

メンタルヘルスケアへの理解を深めることで、音楽業界で働くすべての人々がより充実したクリエイティブな活動を行えるようになることを願っています


――時代の変化によって、業界が変わった点はありますか?

島:

音楽業界における最大の変化は、間違いなくSNSの普及です。

これにより、アーティストやスタッフは、以前に比べて格段に多くの人々と直接コミュニケーションを取れるようになりました。しかし、この直接性が二重の剣となり、作品に対する直接的なフィードバックが時にストレスやプレッシャーの原因にもなっています。

特に、アーティストやスタッフの意図と受け手の解釈の違いは、SNSを通じてより明確になり、作品が期待した反応を得られないときのストレスは以前よりも大きくなりました。

さらに、SNSでの直接的な批判や誹謗中傷への曝露は、アーティストやスタッフのメンタルヘルスケアに新たな挑戦を必要としています。

このように、SNSの普及はアーティストやスタッフにとって新しいチャンスをもたらすと同時に、メンタルヘルスケアの重要性を一層高めています。「Sotto」を通じて、我々はこれらの新しい挑戦に対応し、音楽業界の皆さんが健全なメンタルヘルスを維持できるよう支援していきたいと考えています。


――海外の音楽業界では、メンタルヘルスケアの意識が進んでいるのでしょうか?

島:

海外の多くのアーティストがメンタルヘルスケアについて積極的に発信し、自らの経験や影響力を通じてその重要性を訴えています。

BTSやビリー・アイリッシュは、スピーチやSNSを通じて、メンタルヘルスの課題に正面から向き合い公で語っています。彼らはメンタルヘルスのケアが弱さではなく、勇気の証であることを示しています。

また、セレーナ・ゴメス、アリアナ・グランデ、レディー・ガガ、デミ・ロヴァート、グウィネス・パルトロウなど、自らの心の問題に真摯に向き合い、メンタルヘルス改善のためのプラットフォームの設立やセラピーの重要性の啓発、親切心とメンタルヘルスとの関連性の探求など、様々な形でアクションを起こしてきたセレブたちもいます。

これらのアーティストの取り組みは、若者や支援を必要とする人々に希望と勇気を与え、社会全体にメンタルヘルスケアの重要性を啓発し、より理解ある社会の構築を促しています。しかし日本では、アーティストや音楽業界からのメンタルヘルスケアに関する発信はまだ少ない状況です。

音楽業界で働く人の心に、そっと寄り添うコミュニケーション


――最後に、「Sotto」の今後の展望について教えてください。

西岡:

アーティストを支えるスタッフの方々は、かなり過酷な状態で働いているのかなと思います。生活リズムが崩れてしまっていてそもそも睡眠が十分に取れておらず体に不調が出てしまってる方や、アーティストと同等以上に頑張らなければと思い、なかなか弱音を吐けない方もいらっしゃるのかなと想像すると、第三者であるカウンセリング窓口の存在自体がセルフケアにも繋がっていく可能性はありそうです。

ただ、お仕事が忙しい方だと、ご自身では心身のちょっとした変化や違和感に気付かない場合もあるかもしれません。そのため、周りが「いつもより疲れてるな」とか「いつもよりちょっと会話のテンポが違うな」などと変化に気づいてあげられたら良いと思います。

そのような時に手を差し伸べて、「Sottoを使ってみたら?」という声がゆき交うような企業文化や社会文化に発展していくと業界自体が変わっていくのではないでしょうか。同僚間のコミュニケーションの一環として、「Sotto」という言葉が使われるようになるととても嬉しいですね。

島:

たしかに、アーティストと彼らを支えるスタッフは互いに支え合う関係にあります。どちらかが困難に直面したとき、もう一方が支援することで全体のバランスを保ち、共に前進できる環境を作ることが大切です。また、スタッフ同士が互いを支え合い、ポジティブな関係を築くことも、チーム全体のメンタルヘルスにとって非常に重要です。

メンタルヘルスケアは、まだ音楽業界に十分に浸透していない領域ですが、私たちは「Sotto」を通じて、この状況を変えていきたいと思っています。

「Sotto」を使うことで、スタッフやアーティストが自分自身や同僚のメンタルヘルスをより良くケアできるようになり、業界全体でメンタルヘルスの重要性が認識され、広がっていくことを願っています。